Curion  Special Order Guitar

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 4月のある日、古い友人から届いた一通のメール。高校時代からのギター繋がりである彼からの連絡は、ギター製作の依頼でした。

 リクエスト内容は、ルックス的にはノーマルのSTタイプ。でも吊るしの既製品には無い、自分の仕様にアレンジされたギター。

 

 オーダーギターというのは、たとえ見た目はオーソドックスなデザインでも随所に依頼主の要望が織り込まれている訳で、彼の場合は実にプレイヤー思考に乗っ取ったスペックとなりました。エボニー指板、フラットな指板R、ハムバッカーP.U、ヒールカット、サーキット等々。

 

 そして一番の特徴は、設計概念に当方オリジナルギター”Curion”の仕様を取り入れた事です。25.25”スケール、アングル付きヘッドストック。その他にも特に名前の無い細かな設計上のポイントが幾つか有るのですが、このページではオーナーの了承を得て、それらのレポートを作らせていただきました。

 それでは解説していきましょう。

1. 部材の選出

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 今回、ボディー材については特に決まっていなかった為、音の好みから絞り込んでアルダーかマホガニーかで迷った結果、アルダーに決定。杢目や色見等、木取りを見るため複数枚の材を発注。

 そして、画像から判るだろうか、ボディー材はわざわざ色見を揃えたAAクラスの3pcsという特注なのである。

 通常ならAAクラスのボディー材はセンター2pcsになるのだが、キャビティーの加工による接着面積の減少を避ける為に中央部分に継ぎ目が来ないようにしてあるのだ。その他の部材も全てAAクラスを複数取り寄せて選択した。特にネック材は木目の入り方に気をつかって選んでいる。

 

ネックは、なるべく木目のうねりが少ない物を選ぶ。AAクラスでは節などはまず無い。

ボディーのキャビティー部分にピースの継ぎ目がこないようになっている。

2.ボディー部の特徴

 "Curion"ではキャビティー部に導電塗装を施している。生地の段階で塗ってしまうので、トップコートがかかった後では、配線が不用意にアースに触れてしまう事はほぼ無い。

 かなり徹底的にシールディングするので、アンプを歪ませた状態でもノイズはかなり軽減されている。今回は違うがカバードのハムバッカーをマウントした場合なら、物によってはパッシブとは思えないくらいのS/N比を達成出来る。もちろんヴィンテージ物や、性能よりもオリジナル性による転売価値が重視されるようなギターにはお勧めしないが。

 カラーリングはオーナーの好みで黒の少ない3トーンサンバースト。ピックガードで隠れる筈の1弦側ホーン部分だけは普通に黒のバーストが多い。そうしないとピックガードのエッジ部から黄色が見えてしまう。それくらい黒が少ない。

 こういうトコロもオーダーメイドならではである。

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 各キャビティーは切れ目無く導電塗料が塗られていて、導通という意味で1つに繋がっているのだが、一応要所要所リード線で更に繋いでおく。

 ピックガードの裏面もシールド処理してるので、キャビティー内にハムが入ってくる余地は無い。

 よく音が変わるとの理由で、こういったノイズ対策を敬遠される場合も多いのだが、その楽器や音楽のジャンル、音作りにもよるので、噂だけでためらっている方には、いつか試してみる機会が訪れてほしいと願う。

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 このサンバーストは"Curion"のContoured 3burst と同じやり方で塗っているので、ベースの黄色は半透明、トップコートは濁った飴色が混ざっている。これにより黒が黒でなくなりヴィンテージ風の微妙な色合いに近くなるのだ。仕上げは若干荒めにして、使用感を持たせている。

 塗膜は極薄ラッカー。このままレリック加工も可能だが、今回は無し。それでも極薄塗装ではあまり研磨が出来ないので鏡面のようにはならない為、艶を落としただけで、結構らしくなった。

 

 ネックジョイント部にはプレートを使わずヒールカットを施した。プレイヤビリティー上最低限のカット。バックコンターも小さめ。

 思うにボディーはあまり削らない方が良いんじゃないかな。カスタム物ってその多くが無駄をそぎ落としていくという考え方が多いから、基本削っていく方向だ。しかし、削りゃいいってもんでもないと思う。

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 これは仮組み込みの時の画像。ネックはグリップの形状が最終決定してない為まだ塗装されてない。もちろん、仕込み角やジョイントの深さ等はボディーの塗装前に済んでいる。

 ネックとの接合面の形状がノーマルのストラトと変わらないのは、将来的にネック角度を変更する事があった場合、シム等を使った一般的な方法に対応出来るようにする為。曲線でデザインしてしまうと角度が付いた時に座り方によって平行がおかしくなってくる。

 プレイヤーにとっては大事な問題だと思うのだが...考え過ぎ?

 今回採用した、GOTOHのフィクスドブリッジ。ブラスサドルとスティールサドルの2種類がラインナップされていて、当初はブラスの予定だったのだが支点部の形状がこのギターとはあまり相性良くなかったみたいで、スティールに変更した。ピッチは10.5mm。

 甘めのトーンを狙う筈だったのだが、少々芯の強いキャラに変わった気がする。サドルって、もっと材質のバリエーションが多ければ良いのにと思う。銅とかブロンズとか、フレットに使うニッケル/シルバーとかね。

 余談だが、当方ではサドルのオクターブ調整後の配置はこのようになる事が多い。1〜4弦は緩やか、5、6弦の下がり幅は大きめ。これは僕のオクターブ調整の考え方がセオリー通りではないから。

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